・98S(キューハチ エス)
~スローピングトップチューブ+サポートバーフレーム~
フロントサスペンションの性能向上の恩恵で、シングルトラックをより楽しくスピーディーに走れるようになった時代、それを具体化するためのハードテイルフレームでした。
90Kで妥協したデザイン面を、目的を絞ることで、モンキーのニュースタンダードとして形にすることができました。特にオーダースケルトンが必要だと考える、身長172〜173センチ以下の日本人にとって、山で楽しむためのバイクになったと思います。それは、股下の空間の確保、転倒時のハンドル周りとトップチューブの干渉の排除、XCバイクという言葉で誤魔化してきた90Kでの不満をすべて補えたからです。
目的を絞ったと書きましたが、正確には一つの機能を捨てました。それはトップチューブでのショルダリングです。藪こぎや山岳サイクリングが目的でなければ完全な担ぎはまずなかったし、クロスカントリーレーサーのためのバイクではなかったので、この決定は合理的でした。
このデザインの利点はもう一つありました。より小柄なライダーのためにフレームを作る際の一般的なスローピングフレームの弱点や欠点を補えたことです。
通常のスローピングフレームでは、スタンドオーバーハイトを稼ぐためにシートチューブサイズを必要以上に小さくする場合がほとんどですが、トップチューブが低くなるのと同時にシートステイも必要以上に寝てしまいます。部材を工夫して剛性をいたずらに上げるのも良いですが、シートチューブの長さをある程度確保し、シートステイを通常の部材とすることで乗り味を良くしたかったのです。98デザインでは、トップチューブを必要なだけスロープさせてスタンドオーバーハイトを稼いでも、十分なシートチューブの長さを確保できました。